更新日:2021/03/03
記入者:ECO-AIs
一種類の薬、ワクチン、衛生管理によるアプローチでなく、複数の方法を組み合わせて、新型コロナウイルスに対して対処していく考え方になります(起案:2020/6/18)。
もはや常識となりつつありますが、この起案を記載しようとした頃は、まだまだ社会は追いついていなかったように思います。マスクの着用によって新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ効果が徐々に示されてきていますが、当初より社内でもこの重要性を指摘してきました。そして、ここのところようやく感染予防だけでなく「重症化を防ぐ」効果もあるのではないかということが示唆されています。ワクチンが摂取され、ある程度の集団免疫が得られたとしても、どれだけ持続するかわからない中で、新しい生活様式としてのマスクの着用は、非常に重要な最初のバリアの役割を果たしていく可能性が高いと思われます。
残念ながら、それでも感染せざるを得ないことがあり得ます。その時には、治療薬の候補として、別の用途で用いられていたウイルス治療薬、免疫抑制剤などの複合利用も重要であることがわかってきていますのでご紹介します。医療機関の先生方がご提示されるものが第一優先として捉えるべきですが、情報の一つとしてご提示させていただきます。
右図で示した治療薬のうち、抗HIV治療薬のネルフィナビルは、同じコロナウイルスであるSARSを対象にしたin vitro研究の成果が2004年に日本の研究者によって論文報告されています。また、当該治療薬が、白血球減少症等に用いら れるセファランチンとの併用によって、新型コロナウイルスの細胞への侵入と複製を二重に阻害する可能性などが指摘されていますが、昨年報告されています。
そして、残念ながら重症化してしまった時には、免疫撹乱の可能性があるため、免疫抑制機能のある治療薬の有効性が指摘されています。例えば、ステロイド薬であるデキサメタゾンや免疫賦活化に関与するインターロイキン6の作用を制御するトシリズマブなどの治療薬です。
これらの研究成果は、新型コロナウイルスの研究が出発点ではなく、過去のウイルス研究や別の医学分野の基礎研究の蓄積から推察された薬の組み合わせです。
今回、世界中で使用される方向になったRNAワクチンについても、そうですが、何も新型コロナウイルスに対しての研究成果として、この短期間で確立したわけでなく、過去のがんワクチンなどの研究の延長線上から生まれています。
基礎研究の重要性を今更ながらに理解するべきで、今後、新型コロナウイルスの変異株のみならず、未知のウイルス感染症に対する対策のためにも基礎研究は重視される必要があると思ってほしいです。