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学際領域

食塩からレアメタル? 

更新日:2023/02/24
記入者:ECO-AIs

有機合成化学の分野では化学反応を効率よく行うためにレアメタルが使用されています。しかし、レアメタルは文字通り希少な金属で流通量が限られているため、将来的に安定して使用できるかどうか不明です。そこでレアメタルの代替として、海水に豊富に含まれているNa(ナトリウム)に着目する研究の成功例をご紹介します。

異なる分子同士を結合すること(クロスカップリング)は難しいため、媒介として電子を引き寄せやすいハロゲンと、電子を遠ざける金属を用いることで結合しやすくなることが知られています。この金属部分にレアメタルのLi(リチウム)がよく使用されていますが、レアメタルの1つなので代替品の開発が進められていました。そこで着目されたのが、 海水をはじめ地球上に豊富に存在するNa(ナトリウム)です。

ハロゲンにあたる元素にCl(塩素)が用いられている場合、金属にNa(ナトリウム)を用いると食塩(NaCl)が副生成物となります。そのため安全性が高いことがNa(ナトリウム)の利用のメリットになります。

Na(ナトリウム)の金属単体は水と反応して発火するので、見方を変えると危険な物質ですが、金属Na(ナトリウム)分散体と呼ばれる物質は、発火せず扱いやすいため研究に使用されています。実験の結果、合成反応が容易で、Li(リチウム)ではできない反応が可能になることもありました。

その研究を進められている方の夢は、すべてのLi(リチウム)反応をNa(ナトリウム)で置き換えたい ということのようです。

「Naは合成反応では使えない」と言われた常識を覆す結果となり、今後の産業界の発展に大きく貢献しうるNaの可能性が見えたのではないでしょうか。

ひよっとして、このような技術が確立して、普及したらエネルギー問題の1つも解決するのかもしれません。

https://www.riken.jp/pr/closeup/2022/20221222_1/index.html